正常時の二つの腎臓の機能を併せて100%として、30%以上が働いていれば生命を維持することができますが、30%を下回るとBUN(血中尿素窒素)、クレアチニンなどの血中の窒素化合物の量を表す検査値が上昇していき、治療が必要になります。
腎臓の中にある糸球体の「濾過能力」が低下し、分子量の大きな老廃物が詰まってしまいます。それをなんとか利尿を促進すると共に、濾過、再吸収を促進するために点滴をし、併せてリンやカリウム等の電解質を調整してあげると、BUN、クレアチニンの数値を下げる事が期待できます。
犬猫の慢性腎臓病の場合、人のような透析は現在の獣医療では難しいので、静脈点滴や皮下注射、食事と薬物、吸着剤などを使って、できるだけ余剰物質を吸着させ排泄していく治療法となります。
慢性腎臓病の食事療法食
専用に設計された特別療法食は、どのメーカーのフードも基本的な考え方は同じで病態により成分を調整していますが、慢性腎臓病の場合はドライフードよりウェットフードの使用をお勧めしています。
BUN、クレアチニン等の高窒素血症をコントロールするための飲水量を飲み水だけでまかなおうとすると、消化器系の負担が大きくなります。
ウェットフードは素材そのものが持つ水分を含め、水分量が多いので、消化器系の負担も少なく、体内での水和状態も維持しやすくなると考えています。
獣医師
一般財団法人 比較統合医療学会 前代表理事/東京医科大学 腎臓内科学分野 客員研究員/日本獣医畜産大学 獣医畜産学部獣医学科(現:日本獣医生命科学大学)卒/同大学、大学院獣医学研究科 修士課程修了/東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 博士課程修了/国内でも有数の外科手術治療実績をもつ