【川野先生】 近年、次世代シーケンサーというテクノロジーの進化により、腸内細菌やそのバランスをより深くまで調べることができるようになり、血液検査だけでは分からない病気の予兆を調べることができるようになりました。
腸内細菌のバランスが崩れると、大きな病気につながるリスクが高まります。例えば、アトピー性皮膚炎のような疾患では、特定の菌の量が変わることが報告されています。腸内細菌のバランスを整えることが病気の予防や治療につながるのです。
多様な菌が健康のカギ
健康的な腸内環境は「腸内細菌の多様性」にあります。善玉菌、悪玉菌、日和見菌( 状況によって良くも悪くもなる菌)がバランス良く存在することが重要です。腸内細菌のバランスが崩れると、病気のリスクが高まるので、定期健診と合わせて腸内細菌叢(腸内フローラ)の検査を受けるのは大切です。
現在、予防医療に力を入れている動物病院では、精度の高い腸内細菌叢の検査が導入されようとしています。自宅で採便して専門機関で検査する「腸内フローラ検査キット」などもあります。
腸内細菌を整えるステップ
もし腸内細菌のバランスが乱れていたら、次の3つのステップで改善しましょう。
①低温調理フードを食べる
腸内環境を整えるためには、いきなりサプリメントに頼るのではなく、まずは腸内細菌のエサとなる食物繊維を充分に摂ることが大切です。
一般的に販売されているフードの多くは高温で高圧力をかけるエクストルーダーという機械で作られています。効率よく短時間で大量生産できますが、食物繊維をはじめ大切な栄養素が壊れている可能性があります。
エクストルーダー製ではなく、時間をかけて丁寧に作られた低温製法のフードがおすすめです。低温製法は、腸内細菌のエサである食物繊維が壊れにくいため、充分に摂取することができます。
まずは低温製法で作られたフードを食事に取り入れることを心がけましょう。
②多様な菌とケストース
食事だけで改善が見られない場合は、多様な菌が含まれるサプリメントと、特に効果のある「ケストース」という三糖類のオリゴ糖をセットで与えましょう。低温製法フードの有益な栄養素とサプリメントの相乗効果で、より腸内環境が整いやすくなります。善玉菌(プロバイオティクス)と善玉菌のエサ(プレバイオティクス)を同時に摂取する「シンバイオティクス」が有効です。
③特別なシンバイオティクス
もしも特定の疾患を持っていて、疾患の改善にある程度効果がある菌が特定されていれば、その特定菌とケストースをセットで飲むとより高い効果が期待できます。例えば、アトピー性皮膚炎にはパラカゼイ乳酸菌とケストースの組み合わせによるシンバイオティクスが最も効果を発揮します。
免疫力と腸管免疫
腸管には身体の免疫細胞の約6割以上が集まっており、特に腸管の外にある腸管膜リンパ節に免疫細胞が集まっています。これを「腸管免疫」といい、この免疫細胞たちが活性化した状態を免疫力が高いと言います。
この「腸管免疫」が活性化すると、アレルギーや病気の予防だけでなく、美肌・痩身・睡眠・便秘・認知症、それから感情のコントロールなど様々な効果が期待できます。
腸管免疫を活性化させる
細菌が侵入すると、それに対して免疫細胞たちが反応し、免疫が活性化します。
例えば、食中毒菌を摂取すれば免疫力は上がるのですが、体は危険に晒されてしまうため、健康維持・病気予防という目的に反します。
その「細菌に免疫が反応する」という特性をベースに、すでに安全性が確認されている菌を活用することで、安全に免疫力を高めることができます。安全な細菌(乳酸菌)や真菌(カビ)、酵母菌を体内に摂り入れることで、細菌感染と似た状態が作られ、免疫細胞が活性化されるという理論です。
私たちはこの理論をもとにして、『プランタラムBioMix(タブレット)』というサプリメントを新たに作りました。
新開発サプリメントの役割
『プランタラムBioMix』の目的は免疫力向上です。健康維持、疾患の予防のために、免疫に対して万能で力強い菌を学術データや臨床結果を元にセレクトしました。乳酸菌は免疫力向上に有効なプランタラム菌を配合。そのプランタラム菌の中でも「ラクトバチルスプランタラムFM8」と呼ばれる特殊な乳酸菌を使っており、動物の健康に多岐にわたる効果をもたらすことが期待されています。
その他、私たちの食生活に深くかかわってきた納豆菌や酵母菌(サッカロミセス・セレビシエ)、麹菌やその培養液などが配合されています。中でも麹菌は、日本の伝統的な発酵食品に欠かせない、日本の国菌と言われる「アスペルギルス・オリゼー」を使用しています。
これらの菌は食に貢献するだけでなく、その強靭な生命力と様々な機能性から、健康維持に貢献する重要な微生物です。
【まとめ】 愛犬愛猫の腸内環境を整えるには、まずは低温調理のフードからはじめ、必要に応じて適切なサプリメントやケストースを組み合わせてみましょう。
腸内環境を整えることは今ある健康問題の改善だけでなく未来の疾患予防にも役立ちます。
また愛犬愛猫の健康管理には、日常的な観察や定期的な健康診断を行い、大切な家族の幸せな生活をサポートしていきましょう。

獣医学博士
日本獣医皮膚科学会認定医
アレルギーに悩む犬猫を日々診察・治療している皮膚専門獣医師