生きることに欠かせない「水」の存在ーー。
そんな水の働きや水を通じた生命システムの包括的な理解を目指し、第5回アクアフォトミクス国際学会(2025年5月・神戸大学)に参加してきました。
アクアフォトミクスとは?
「アクアフォトミクス」とは、アクア(水)フォト(光子)オミクス(科学分野)を指した新しい科学分野で、ブルガリア出身のツェンコヴァ・ルミアナ教授(神戸大学大学院農学研究科アクアフォトミクス研究分野特命教授)により提唱されました。
水と光の相互作用に着目し、水がシステムの状態や機能に関する情報をどのように反映・伝達するのかを研究することで、人間や動物を含む生体システムを分析及び理解しようとする学際的な科学です。
ウォーターミラーアプローチ
この科学の根幹は「ウォーターミラーアプローチ」と呼ばれる発見に基づいています。それは「水」が単なる溶媒ではなく、周囲の物質やエネルギーを映し出す「鏡」のように振る舞うというものです。
水溶液系や生物システムにおける全ての成分とエネルギーが水の構造に影響を与え、その変化が水の吸収スペクトルに反映、そのスペクトルパターン(WASP)を分析することにより、間接的にシステムに関する情報を得ることができます。
まるで湖に景色がそっくりそのまま映る「水鏡」のように働くことから、水鏡(ウォーターミラー)アプローチと呼ばれています。
〝水〞がすべてを知っている
ツェンコヴァ教授がアクアフォトミクスを始めるきっかけとなったのは「牛の乳房炎」の診断研究でした。
専門である生体計測工学の手法を用いて生乳のタンパク質や血液などを調べていたのですが、それだけでは分からないことが多くあったのです。
そんな中で、タンパク質の周りにある〝水〞を見ることで、様々な情報が見えてくることに気づきました。
さらに、ミルクの〝水〞だけでなく、血液や体液、尿など、牛の体のあらゆる場所の〝水〞が、全く同じように生体内の変化を伝えているということを発見しました。
このことから、「〝水〞は単に物質を溶解するだけでなく、情報を記憶し、さらにそれを体のどこへでも瞬時に伝達する媒体である」という考えに至りました。
「〝水〞がすべてを知っている」という教授の言葉は、アクアフォトミクスの可能性を端的に表しています。
ペット分野への活用
この〝水〞に関する発見は、私たちの大切な家族であるペットたちの健康管理や診断において、非常に大きな可能性を秘めています。
■負担となる処置が不要に
アクアフォトミクスによる測定は、太陽光に含まれる安全性の高い近赤外線分光法を用います。
これは動物の体の表面に光を当てるだけで測定できるため、血液採取やレントゲン撮影のような、動物にとって負担となる処置が不要です。
動物にストレスを与えずに情報を得られる点は、特に病気や高齢のペットにとって大きなメリットとなります。
例えば、確定診断ができることで治療が大きく進歩する可能性があるものに、犬の皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)があります。この診断法にアクアフォトミクスを活用する研究も始まろうとしており、より迅速で客観的、かつ負担の少ない診断法の確立が目指されています。
■全身の健康状態がわかる
水は全身の情報を伝達する媒体であるため、体のどこか一部分(例えば皮膚の一部や手のひら)の水の状態を測定するだけで、動物の全身の健康状態に関わる情報を得られる可能性があります。これにより、尿検査や血液検査でしか分からなかった情報が、より簡便な方法で捉えられるかもしれません。
ジャイアントパンダの尿の水スペクトルから排卵期を検出する研究や、乳牛のミルクから乳房炎を診断する研究など、様々な動物での応用が進んでいます。
■水の構造に働きかける
アクアフォトミクスは、水に含まれる「成分」を見るだけでなく、水の分子同士が作る「構造」や「ネットワーク」 に注目しています。水分子は常に〝振動〞し、秒間1兆回もの〝ダンスを踊っている〞と言われています。この〝振動〞にみられる水分子のネットワークや構造変化が、水の機能と密接に関わり、それぞれの水のキャラクターを形作っています。その水の構造変化をアクアフォトミクスによって捉えることで、従来の化学分析では見えなかった、「生体のより繊細な状態」を理解することができると考えられています。
ツェンコヴァ教授は「全ての病気は水のネットワークの崩れによって起きる」とおっしゃっています。
アクアフォトミクスでこの崩れを診断し、さらに水の構造に働きかけるようなアプローチを行うことが、生体の治癒力につながる最先端の医療となる可能性も示唆されています。
■将来の状態傾向を予測
アクアフォトミクスでは、時間経過とともに水のスペクトルパターンがどのように変化するかを追跡することができます。これにより、単に「今、どういう状態か」を知るだけでなく、疾患の進行や治療による改善、あるいは将来の状態の傾向を「予測できる可能性」が生まれます。
短い期間の測定データから、長期的な変化を見通せるようになるかもしれません。
「ゆの里」との共同研究
アクアフォトミクスの研究は、和歌山県橋本市にある「ゆの里」との長年にわたる共同研究によって大きく前進しています。
「ゆの里」には性質が大きく異なる3 種類の水があります。ツェンコヴァ教授は、これらの水が生物の細胞内、細胞外、細胞膜の水と似たキャラクターを持っていることに着目されました。
「ゆの里」では、水の「成分」ではなく「構造から見た機能性」に基づいて「水をデザインする」という取り組みも行っています。これは、水の構造やエネルギーが機能に影響を与えるというアクアフォトミクスの考え方に基づいたもので、「未来の医療や健康法に大きな指針」を与えるものとして注目されています。
また、皆様にご紹介している飲料水『月のしずく』は水のスペクトルパターンが月の満ち欠けと99.75%という高い相関を示すという驚きのデータも得られています。これは『月のしずく』が、月のサイクルを含む宇宙の営みとリンクしている可能性を示唆しており、非常に興味深い発見です。
私たちも応援しています!
ペットスタンスがアクアフォトミクスを応援しているのは、この科学が持つ「生き物に対して負荷をかけずに、より深く、多角的な情報を得られる」という革新性と、それが動物たちの健康に貢献する大きな可能性を秘めているからです。
水の構造やネットワークという新しい視点は、病気の根本原因や、これまでの診断法では見えなかった生体の状態を理解する手がかりを与えてくれるかもしれません。
また、水の情報伝達や予測の可能性は、早期発見や、よりパーソナライズされたケアへの道を開くかもしれません。
アクアフォトミクスはまだ発展途上の新しい科学ですが、その知見は動物たちの健やかで快適な生活を実現するための重要な鍵となる可能性を秘めています。
ペットスタンスは、このような未来の動物医療につながる画期的な研究を応援し、ご理解ある獣医師の方々との協力も得ながら、「生き物への水アプローチ」という新しい視点からの研究の発展をサポートしていきたいと考えております。

ペットスタンス 店長
ペット栄養管理士/愛玩動物飼養管理士1級/ペットフード販売士