小型犬では成犬の8割が歯周病と言われるほど、口腔ケアは無視できない問題です。気がつかないうちに進行するケースも少なくありません。
また口腔内細菌の種類やpHが人とは違うため、虫歯はほとんどできませんが、食べかす(残渣)からの歯垢が歯石になるまでの期間が3~5日と人に比べて短いため歯周病になりやすい傾向があります。
一度歯石になってしまうと歯ブラシでは取れません。ですから、毎日(少なくとも1日おき)の歯磨きで物理的に歯垢を落とすケアがどうしても欠かせないのです。
歯周病は口だけの問題ではないのが怖いところ。歯周病菌や菌が出す毒素が血流に乗って全身に回ると、心臓・腎臓など全身への悪影響も心配されます。
歯につく食事・つかない食事
一般的にはドライフードの方がウェットフードよりも歯に付きにくいという印象がありますが、これも一概には言えません。皆さんもクッキーを食べた後に歯についた経験があると思いますが、炭水化物(でんぷん質)を多く含むフードは、ドライでもウエットでも歯に付きやすい傾向があります。丸呑みできるフードであれば多少は軽減されますが、中でもお米や小麦製品を使ったおじや状の食事はネバネバして歯に付きやすいと言えます。反対に、でんぷん質の少ない野菜や肉中心の食事は歯に付きにくい傾向があります。何れにしても歯につく歯垢をゼロにはできませんので、歯磨きは欠かせません。
口腔内の健康をサポート
食事で歯垢をゼロにする事は困難ですが、口腔内の健康維持に役立つ工夫は可能です。
カルシウムやビタミンDは健やかな歯の維持に役に立つ栄養素です。
また、青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸には炎症を抑える効果があるため、歯周病の進行を抑える効果も期待できます。
コラーゲンなどのアミノ酸やビタミンA、C、Eは歯周組織や粘膜の維持と再生をサポートします。
また、乳酸菌など口腔内細菌バランスを整えるサプリメントなどの利用も検討すると良いでしょう。
おすすめのおやつ
歯磨きガムのおやつなども市販されていますが、それで歯垢を万遍なく掃除する事はほぼ困難です。
固すぎる骨(大腿骨など)やヒズメ、鹿の角などでできたおやつは、歯がかけたり折れたりしてしまう危険性があるため注意が必要です。
一方、セルロースなどの繊維質が豊富な野菜や、硬めの動物性食材(腱や筋、皮など)のおやつは、噛む事で唾液の分泌を促しますので、口腔内の健康には有効です。
●おやつ選びのポイント
NG 固すぎる骨(太い大腿骨、ヒヅメ、鹿の角など)
NG 炭水化物中心の噛む必要があるおやつ(ボーロ、クッキーなど)
NG キシリトール入りのおやつ
OK アキレス、スジ肉などの噛み応えがある部位
統合医療栄養学セミナー講師、米国LVT(米国動物看護師)、生活習慣病予防管理士、ペット栄養管理士
米国にてLVT免許を取得後、犬猫のホリスティックな代替医療や栄養学について学び2017年に帰国。2012年より動物病院、獣医師等の医療従事者向け、飼い主さま向けに、栄養セミナー・手作り食セミナーを随時行っています。