人と同様に犬猫の死因の中でも近年特に多い病気が「がん」です。人の研究では、がん発生の9割以上で生活習慣が関連しており、その中でも食生活で予防できるのが3~4割とも言われています。
生活習慣病の予防に食事が果たす役割はとても重要です。がんは生活習慣病の代表的な疾患であり、細胞レベルでの代謝異常によるものと考えられています。細胞からイキイキする食事をめざしましょう。
低炭水化物な食事を
肥満は万病のもとですが、細胞レベルでの炎症との関連も示唆されていますので、がんを予防するためにも普段から避けたいものです。
食べ過ぎはもちろんのこと、特に高炭水化物の食事は高G(I グリセミックインデックス)値を引き起こし、インスリンの急激な分泌も促進されますので体に負担がかかります。
また、炭水化物に含まれる糖類はがん細胞の餌になるとも言われており、がん細胞の代謝を考えると「低炭水化物、高たんぱく・脂肪食」が理想的な食事のバランスです。炭水化物の中でも、小麦や麦類に含まれるグルテンは、腸の炎症やアレルギーとの関連性があると示唆されているため、小麦(グルテン)の含まれていないフードをお勧めします。
体重をキープしていく
太り過ぎは問題ですが、逆にがんの後期になると悪液質とよばれるエネルギーの代謝異常によって顕著な体重減少が見られることがよくあります。脂質やタンパク質から十分なエネルギーを摂取して体重をキープしていく心がけも必要になります。
抗酸化食材を取り入れる
人と同様に、犬でもがん細胞の抑制のためには、野菜や果物などに含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質が有用であるとの研究があります。例えば、ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜にはがん抑制作用が期待できると言われています。犬が食べられる野菜や果物は、飼い主さんの食事と共用できるものも多いので、ぜひ食生活に取り入れていただきたいです。野菜や果物の有効成分は硬い細胞壁の中に含まれていますので、ワンちゃんが消化しやすいように、細かく刻んだりピューレ状にするなどの工夫が必要です。
また、魚や野生のシカ肉などに含まれる脂には、抗酸化・抗炎症作用が期待できるオメガ3系の脂肪酸(DHAやEPA)が含まれています。こちらも積極的に利用していただきたいです。
体に良い食材を取り入れた食事で、長い健康寿命を楽しみたいですね。
●抗酸化作用の期待できる食材の例
●りんご、スイカ、イチゴ、ブルーベリーなどの果物
● ブロッコリー、キャベツ(アブラナ科の野菜)
● かぼちゃ、人参、ホウレン草、ケール、ビーツなど(緑黄色野菜)
●海苔、スピルリナ、クロレラなど(海藻類)
● 生姜、パセリ、など(少量で)
●エキストラバージンオリーブ油、亜麻仁油など
●青魚、野生のシカ肉(オメガ3系脂肪酸)
統合医療栄養学セミナー講師、米国LVT(米国動物看護師)、生活習慣病予防管理士、ペット栄養管理士
米国にてLVT免許を取得後、犬猫のホリスティックな代替医療や栄養学について学び2017年に帰国。2012年より動物病院、獣医師等の医療従事者向け、飼い主さま向けに、栄養セミナー・手作り食セミナーを随時行っています。