皮膚疾患には、食材によるアレルギー反応といった直接的な原因もありますが、栄養素の不足や吸収不良、そしてその間接的な原因となる遺伝的背景や、腸内環境の問題など、要因が複雑にからみあっていることも多いです。もちろん、住環境を清潔に保つ、ストレスを軽減する、などの配慮は必要ですが、今回は食事の配慮についてお話します。
個体差と消化吸収率の違い
純血種の犬猫を飼う人は増えていますが、遺伝的にももともと問題を抱えている個体が増えているようです。そのような場合、消化器や腸内環境のバランスも崩れがちなことが多く、栄養素の消化と吸収がうまくできない子も…。
皮膚に関連する栄養素としては、ビタミンA、亜鉛、オメガ3脂肪酸などが一般的ですが、そのようなピンポイントでの栄養素を気にする前に、まずは普段食べているフード全体の見直しをおすすめします。
低品質なフードでおきる皮膚疾患は「ジェネリックフード症候群」ともよばれます。必ずしも安いフードですぐに問題になるというわけではありませんが、品質を落としたフードを食べていて、その子にとっての栄養素が足りない場合、問題となることがあります。
低品質なフードの心配な点
● 高温加熱により栄養素が変性している。
特にタンパク質の消化吸収率が低下。必須アミノ酸の利用率も低くなります。
●脂肪の質が悪く不十分。
脂肪は比較的高価な原料。脂肪量を抑えたフードでかつ高温加熱により脂肪が酸化することで必須脂肪酸も不足します。また酸化した脂肪は体の中から貴重なビタミンやミネラルを奪います。
● 穀類過多なフードは、過剰なフィチン酸や食物繊維により、ビタミンやミネラルなどの吸収が阻害される。
必須アミノ酸、必須脂肪酸、ビタミン・ミネラルなどが足りなくなると、ビタミンA 欠乏症や亜鉛反応性皮膚炎と似た症状が現れることも…。
普段のフードの見直しを
● 必要な脂肪、特に必須脂肪酸を十分含む
● 十分なタンパク質を含み、穀類は多すぎない
● 植物性よりも動物性食品を主なタンパク源としている
● 包装を開けたときに嫌な臭い(酸化臭)がしない。美味しそうな匂いがする
などのポイントをクリアしているフードが望ましいです。
食事中の脂肪が少なすぎると皮毛がパサパサしてくることがありますが、良い脂肪は酸化しやすい特徴があるため、フード自体は酸化しにくい低脂肪のものを選んでも良いです。そのかわり、与えるときに新鮮で良い脂肪をトッピングすることをおすすめします。
統合医療栄養学セミナー講師、米国LVT(米国動物看護師)、生活習慣病予防管理士、ペット栄養管理士
米国にてLVT免許を取得後、犬猫のホリスティックな代替医療や栄養学について学び2017年に帰国。2012年より動物病院、獣医師等の医療従事者向け、飼い主さま向けに、栄養セミナー・手作り食セミナーを随時行っています。